フキゲン課長の溺愛事情
「なんだ?」

 璃子がその逞しい腕に見とれているのに気づいて、達樹が言った。

「いえ!」

(課長が〝一応〟じゃなくて〝紛れもなく〟男性だと認識したなんて言えない!)

 璃子はドギマギしながら立ち上がった。

「プリンとジェラート、食べに行きましょうよ」
「お待ちかねだったかな」

 達樹にからかうように言われて、璃子はぷいっと横を向いた。

「ごめん、そう怒るなって。水上の反応がかわいくてつい……」

 達樹の言葉に、璃子は彼の方を見た。彼はハッとしたように片手を口もとにあてている。

(私の反応がかわいい!? 今たしかにそう言ったよね?)

 璃子が信じられない思いでまじまじと見ているうちに、達樹の頬がほのかに朱に染まった。

「そんなにのんびりしていて売り切れても知らないからな」

 そう言ってさっさと歩き出したので、璃子はあわてて彼に続いた。
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