フキゲン課長の溺愛事情
トイレを見ろってどういうことよ、と思いながら、璃子は木の扉を開けた。壁はこちらも木目の美しい焦げ茶色の板が張られているが、ごくごく普通の洋式トイレである。だが、そのフタを開けて璃子は驚いた。目にしたものが信じられなくて、いったんフタを閉じ、またそっと開ける。
二度目に見ても同じだった。そのトイレの便器は、なぜか真ん中に横向きの仕切りのようなものがあって、前後にふたつに分れているのだ。
「なんで……? これって本当にトイレですか?」
璃子は振り返って達樹を見た。眉を寄せた璃子の顔を見て、達樹はこらえきれないといった様子でぷっと吹き出す。
「これは分離トイレと呼ばれるものだよ」
「分離トイレ……?」
「そう」
達樹が咳払いをして、真面目な顔で説明を始める。
「農業肥料にはリンやアンモニアが必要なのは知ってるね?」
「一応」
「今日本でも、大量のエネルギーを使って空気中の窒素から窒素肥料を作っているし、世界的に枯渇が懸念されているリン鉱石を採掘してリン肥料を作っている。リンは数十年から百年で枯渇すると言われてて、リンの確保は食料自給率の低い日本にとって、いずれとても重要になると考えられているんだ。トイレの汚水は、下水としてそのまま川や海に流せば、含まれるリンと窒素のせいで、藻類が大量発生して汚染の原因になる。でも、適切に処理すれば飼料として使えるんだ」
二度目に見ても同じだった。そのトイレの便器は、なぜか真ん中に横向きの仕切りのようなものがあって、前後にふたつに分れているのだ。
「なんで……? これって本当にトイレですか?」
璃子は振り返って達樹を見た。眉を寄せた璃子の顔を見て、達樹はこらえきれないといった様子でぷっと吹き出す。
「これは分離トイレと呼ばれるものだよ」
「分離トイレ……?」
「そう」
達樹が咳払いをして、真面目な顔で説明を始める。
「農業肥料にはリンやアンモニアが必要なのは知ってるね?」
「一応」
「今日本でも、大量のエネルギーを使って空気中の窒素から窒素肥料を作っているし、世界的に枯渇が懸念されているリン鉱石を採掘してリン肥料を作っている。リンは数十年から百年で枯渇すると言われてて、リンの確保は食料自給率の低い日本にとって、いずれとても重要になると考えられているんだ。トイレの汚水は、下水としてそのまま川や海に流せば、含まれるリンと窒素のせいで、藻類が大量発生して汚染の原因になる。でも、適切に処理すれば飼料として使えるんだ」