フキゲン課長の溺愛事情
『放っておけなかったんだ』
『礼を言われる理由がわからないな。昇進のことなんだとしたら、あれは水上が自分で掴み取ったことだ』

 そのどれも、彼の誠実さを表した言葉ではなかったか。

「そうだよね……。無責任どころか、とてもステキな人、信じられないくらいいい人よ」
「だったら、帰りなよ。そして話し合いなよ」
「それしか……解決法はないよね」
「うん、ない」

 沙織にあっさりと言われ、璃子は小さく笑った。

「帰るけど、食べ終わるまでは付き合ってよ」
「もちろん。私だって今日は彼に『璃子とご飯食べに行く』って言っちゃったも~ん。今さら帰って彼のご飯を作りたくないし」

 沙織がいたずらっぽく言ってグラスを掲げた。

「じゃ、気分直しに、乾杯しよう」
「どんなのよ、それ」

 璃子は笑いながらグラスを掲げた。
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