フキゲン課長の溺愛事情
 璃子は靴を脱ぎながら尋ねた。ドアをロックしていた達樹が怪訝そうに眉を寄せる。

「璃子?」

 彼が一歩近づくので、璃子はショルダーバッグを抱えて一歩後ずさった。

「璃子、なにかあったのか?」
「べ、別になにも……」
「なにもないって顔じゃない」

 達樹が言って璃子の左手首を掴み、彼の方に引き寄せた。狭い廊下で彼に見つめられて、璃子の心臓が苦しげに鼓動を速める。

 璃子は彼の視線から逃れるようにうつむいた。

「あの、明日は月曜だし、私、もうシャワーを浴びて寝ますからっ」
「まさかひとりで?」

 達樹の言葉に、璃子の頭にカッと血が上った。冷静に話をしようと思っていた気持ちは、どこかへ吹き飛んでいた。

(私を抱いたことを後悔してるくせに、どうしてそんなことが言えるの!?)
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