フキゲン課長の溺愛事情
「うー……どうかなぁ……。課長には迷惑かけまくってるし……」
「酔って絡んで送ってもらったことを気にしてるの?」
「一応」

 それだけじゃないけど、それ以上のことは言えない。

 璃子の複雑な表情を見て沙織が言う。

「課長、まだ怒ってるの? やっぱり〝不機嫌課長〟の機嫌はそんなに簡単には直らないのかぁ」

 沙織の言葉に璃子は考え込んだ。達樹は怒っているどころか、璃子に親切にしてくれた。それなのにもし璃子が頑なにインタビューを嫌がったら、沙織たちに、彼がいつまでも根に持つ上司だと思われてしまいそうだ。

「課長は意外といい人だったよ。もう怒ってないし」
「じゃあ、インタビューお願い」

 断れない流れになってしまい、璃子はしぶしぶ言う。

「わかった」
「ありがと! じゃ、エコタウンの概説については私がやるね。総務課の派遣社員さんに英語版パンフを訳してもらうから」

 沙織が言って、金曜日に達樹にもらった薄い冊子を右手に取った。OSK繊維開発には翻訳担当の派遣社員がひとりいる。今回のパンフレットのようなものから、海外での特許出願書類にいたるまで、さまざまな内容の書類を英訳・日本語訳してくれるのだ。
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