フキゲン課長の溺愛事情
とはいえ、これから会う相手のことを考えると、やはり緊張してしまう。酔っていたといえ、醜態をさらした上に、彼氏と勘違いして璃子からキスをしてしまった相手だ。
(課長はもう気にしてないよね……?)
キスした直後に『俺を襲うな』と言われたけれど、それだけだ。責められてもいないし、その後なにも言われていない。
(お互いいい大人なんだし、あれはなかったことにして普通に接したらいいよねっ)
璃子はエレベーターで五階から二階の総務部のフロアに下りた。エレベーター横の総務部総務課のドアは開けっ放しになっている。璃子はそこから中を覗いた。一番奥の窓際には総務課長の席があり、入口ドアに近い席に二名の派遣社員が座っている。ひとりは総務の補助を行い、もうひとりは翻訳を専門に行う派遣社員だ。その翻訳専門の派遣社員、和田友紀奈(ゆきな)は、一番手前の席でキーボードを打っている。明るい茶髪にゆるふわなパーマをかけた二十三歳の女性で、半年前に派遣会社からの紹介でOSK繊維開発に派遣されてきた。
彼女が集中している様子なので、璃子は小声で呼びかけた。
「和田さーん」
璃子の声に反応して、友紀奈が顔を上げた。入口に立つ璃子を見て、眉を寄せる。
「なんですか」
(課長はもう気にしてないよね……?)
キスした直後に『俺を襲うな』と言われたけれど、それだけだ。責められてもいないし、その後なにも言われていない。
(お互いいい大人なんだし、あれはなかったことにして普通に接したらいいよねっ)
璃子はエレベーターで五階から二階の総務部のフロアに下りた。エレベーター横の総務部総務課のドアは開けっ放しになっている。璃子はそこから中を覗いた。一番奥の窓際には総務課長の席があり、入口ドアに近い席に二名の派遣社員が座っている。ひとりは総務の補助を行い、もうひとりは翻訳を専門に行う派遣社員だ。その翻訳専門の派遣社員、和田友紀奈(ゆきな)は、一番手前の席でキーボードを打っている。明るい茶髪にゆるふわなパーマをかけた二十三歳の女性で、半年前に派遣会社からの紹介でOSK繊維開発に派遣されてきた。
彼女が集中している様子なので、璃子は小声で呼びかけた。
「和田さーん」
璃子の声に反応して、友紀奈が顔を上げた。入口に立つ璃子を見て、眉を寄せる。
「なんですか」