B級恋愛
気がつくと夕方になっていた。よほど疲れが溜まっていたのだろう。ぐっすりと眠っていたようだ。
体を起こし服を着替える。下におりると両親はまだ眠っているようだ。

「散歩にいこうか」

室内で飼っている愛犬にこう声をかけてゲージを開ける。勢いよく飛び出してきて身震いをする。リードを手にして愛犬の後を追った。
梅雨の僅かの晴れ間が心地よい。公園の前まで来れば若葉がさわさわと風に揺れている。つい先日まで桜吹雪が舞っていてきれいだなと感じたはずなのにもう若葉だ。季節が流れていくのはあっという間だ。西の空を見れば日がまだ高い。夏が近いことを知らせてくれている。
家に戻ると母親が目を覚ましていた。愛犬をゲージに戻すと再び部屋に向かった。

夕食は簡素な物になった。疲れはそう簡単に抜けはしない。弁当のおかずになりそうな冷凍食品もないが明日も休みなのが幸いなことだ。のんびりしようと決めた。

次の日―――

杏子は携帯の着信音で目を覚ました。

「おはよう、いつまで寝ている?」

電話の向こうの声の主に覚えはあった。しかし寝起きの杏子にそれを即座に判断をする能力は無いに等しく黙りする。

「つい昨日に聞いた上司の声を忘れたか?」

―――――!

杏子の背中に冷や汗が流れる。

「思い出したか」

携帯の向こうの声の主が声をあげて笑った
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