B級恋愛
そういう冗談はなしにしてほしい、こんな事を思った。心臓に悪い。悪すぎる。仕事でコキ使われた方がまだましだ。

「さてと。そろそろ出るか。二次会が始まる頃のようだし」

市川はこう言って立ち上がる。杏子もそれに倣う。

「ごちそうさまでした」

会計を済ませた市川に深々と頭を下げる。
「ああ。心配かけたこと皆に謝っておけよ」

「はい…」

体調不良で抜け出したことになっている。親戚にも謝らなければならない。

「先に越されるの…たしかに悔しいよな…」
「え…」

市川の呟きに反応してしまった。

「…なんでもねぇよ、じゃ会社でな」

こう言って笑いその場を離れて行った。

杏子が会場に戻ると式は終わっていた。事情は伝わっていたとはいえ、しっかりお小言は受けた。

娘が体調を崩していたというのにそれに対する労いはなかった。―――事実、体調不良なんて嘘なんだけれども。

家に着くなりドレスを脱ぎ捨てベッドに倒れ込む。妹達は二次会に向かいその後ハネムーンに行くらしい。行き先は北海道だ。理由をきいたら「旦那が行ったことないから」との事。あきれて言葉も出なかった。

(行ったことがないからってハネムーンの行き先にされるってどうなの?)

こんな思いが何度頭を掠めたか。妹も呆れていたが結局はそこになったようだ。

(ハネムーンはやっぱ二人が行ったことがないところだよね、うん)

こんな事を思ったら微睡みに意識を持っていかれてしまった。
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