B級恋愛
「市川さんっ…どうしたんですか」

あわてて跳ね起きてなぜか正座をし電話対応をする。彼がかけてきたというのならよっぽど重要な事だと感じたのだ。

「今から何れくらいで出てこられる?」

「1時間位ですかね…」

ざっくりと時間を伝える。

「そっか。んじゃ1時間後に迎えに行くわ」

「え…?」

杏子は固まる。

「なんだよ?文句あるのか」

「無いです…」

この台詞しか出てこない。

「わかればいい。ナビをセットするから住所を教えてくれ」

こう言われてしぶしぶ杏子は住所を教えた。

1時間後。市川が本当に迎えに来た。父親に遭遇した彼は何やら楽しそうに話している。彼を待たせまいと身支度の仕上げに取りかかる。

「お待たせして申し訳ありません」

いそいそと彼の元に走っていくと助手席のドアを開けてくれた。一礼して乗り込むとドアが閉まり、市川が運転席に乗る。

「シートベルト締めたか?」

「はい」

杏子が頷くとエンジンをかけて走り出した。
旧料金所を通り抜け高速にのる。県外に行くというのはわかったがどこに行くつもりなのかわからない。
―――というより…

(何を考えてんの?)

思わず市川を凝視してしまう。

「オレの顔に何か付いてっか?」

「へっ?」

うわずった声で返す。

「見つめられんのは嫌じゃねぇけど緊張すんだわ」

―――――!

市川に言われあわてて視線を逸らす。弁明する理由なんて見つからない。

―――ただ…

「運転するときの市川さんって格好いいなと思って」

!!!?

市川の表情が固まる。運転をしていることもあり顔は杏子の方を向くことはない。

「―――煙草、吸ってもいいか」

照れ隠しをするかのようにこう杏子に訪ねる

「いいですよ」

杏子がこう返すと市川は窓を開け慣れた手付きで煙草に火をつけた。

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