B級恋愛
ドレスを着て待っていること数分。

「用意はいいか?」

市川が戻ってきた。

「はい…ってか、どうしたんですか?その格好…」

「いいだろう、別に…シャワーを浴びたんだったな」

(気づくのが遅いよ…)

心の中で市川をどつく。

「固めすぎない程度のセットを頼むか…」

こう呟くと携帯を取り出してどこかに連絡をし始めた。

コンコンコン…

しばらくしてドアがノックされた。市川が出ていき何やら話している。

「相崎様、ドレッサーの前にお座りください…」

「はい…?」

「言われた通りにしろ」

立ちすくんだままの杏子に市川がきつくいい放つ。その迫力に負けてドレッサーの前に座った。

「ナチュナルな感じにしてやってくれ」

市川がこう言うと係員は手際よく杏子のメイクアップをしていく。

「…お待たせしました…」

数分後。杏子は見事に『変身』した

「へぇ…うまく化けられるものだ」

市川はこう言って感心している。

(…………一回ぶん殴ったろか)

こんな怒りの感情が沸き上がり拳を作る。しかしそれを挙げることはしない。…折角いつもと違う雰囲気を纏えたのだから。

「市川さんも素敵ですよ、いつもと違って」

「…殴られたいか?腕立て伏せ10回にするか?」

ひきつった笑顔で市川がこう言う。相変わらず怖い笑顔だと感じる。

「両方とも遠慮します」

杏子は笑顔でこう返した。

「…殴っていいですか?それとも腕立て伏せ100回がいいですか?」

今度は杏子が笑顔をひきつらせる番だった。

「あ、もしかして…」

「…妹の結婚式の二次会の会場ですよ」

ネクタイを容赦なく引っ張り怒りを込めて小声でこう返し看板を指す。市川はチラリとそれを見やると感心している。

「…で、どちらにいたしますか?」

杏子はこう言い市川を睨んだ。

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