B級恋愛
いろんな事を質問攻めにされて混乱しながら答えていくと食事が運ばれてきた。
コース料理のメインはヒレステーキだ。

「美味しいっ」

何度目になるかわからない歓喜の声をあげる。

「うるさい。黙って食え」

市川のこの台詞も何度目になるかわからない。怒りも頂点に達しつつあるのが…何となく…わかる。

「美味しいものを美味しいと言って何がいけないんですかっ…ほとんど食べていなくてお腹空いていたんですっ」

こんなやり取りが何度あっただろう。

「…もういい…ったく。服装はそれなりなんだからもう少し大人しくしろ」

半ば呆れながら呟いてフィレステーキの最後の一口を入れた。

「で。どうしてほとんど食べなかったんだ?」

食後のデザートまでも完食しホットコーヒーを口にしながら杏子にこう聞く。前職場だったから言える。ここの結婚式の食事は然程不味くはない…好みの問題はあるにしても。

「嫌いな人…義弟のお金でなんて食べたくないから」

………?

杏子の言っている意味が理解できず目を見開く。

「結婚式の費用全額あっち持ちなんですよ」

こう言うとコーヒーを飲み干す。

「そりゃあ良かったじゃねえか。ただで―――」

「本来なら折半でしょ?たしかに向こうは稼ぎがあるかもだけど。私は自分のドレス代くらい自分で持ちたい」

「その意気込みは立派だ。だから支払いを気にしているのか?」

市川の質問に杏子は頷く。部屋代だけではなくこの食事代も貸しになってしまう。それが嫌だった。

「そんな事は気にするな。けどどうしてもというんなら…」

杏子のすぐそばまで顔を近づけてくる。思わず顔を反らす。

「…体で払ってくれ。入浴シーンをタダで見せてくれればいい」

「…なっ…」

市川が小声でこう言うと杏子は顔を紅くする。

「冗談」

クククッと声をあげて笑い杏子から離れた。

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