SEXY-POLICE79
その悩みは小さな音に遮られ桐野はうっとうしげに携帯電話に出る。桐野の目つきが一気に変わって、険しく鋭い眼光が明らかになるとそれは事件が起きた証。

「事件だね」

桐野は無言のまま頷くとベッドから起き上がり、はずされた時計やら上着をはおっていく。その行動で、須田は彼が病室を出ることを悟ったのか、制止の声を放つ。しかし、桐野がそんな言葉を聞くはずもなく、須田はもう何も言えなかった。

すり抜けて行ってしまう彼の背中を、自分はただ見ていることしかできないのか。

胸に巻かれた痛々しい包帯の痕を、自分は――。
離れたくない――。



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