SEXY-POLICE79
本当にいまここに生きていることだって奇跡かもしれないのに。彼はなぜわからないのか。周りにいるたくさんの自分を支えてくれている存在(ヒト)たちを。彼はどうしていつもひとりで背負い込もうとするのか。

須田は心配でならない。
わかっている。それが彼なりの優しさなのでということは。彼は自分にこれ以上心配をかけないために病院を出ていった。そしてこれ以上死亡者がでない為に彼は犯人を捕まえに出かけたことぐらい自分は痛いほどよくわかっている。
でも…。それでも。自分は少しは考えてほしいかった。遠くから見ていることしかできないものいるのだということに。

「大丈夫だよ。医者もそんな大した傷じゃないって言ってたし」

初めて嘘をついた気がした。須田はずきりと胸に小さな痛みを感じた。
嘘にはついて良い事と悪い事がある。嘘は時にヒトを安心させ、嘘は時にヒトを不安にさせる。そして時に、深く相手を傷つける。

「須田さん?」

と柳沢が押し黙る須田を怪訝に思ったのか、顔色を窺うようにして名前を呼ぶ。須田は我に戻って、

「いや、何でもない。桐野くんなら事件みたいでね」

と言うと柳沢は何かを思い出したみたく、あっと声を上げた。

「事件って言えば、さっき署長から先輩に連絡するように言われてたんです。ついさっき刑事が三人殺害されたって」
「刑事が三人も…」
「それもキーポイントで心臓を一撃ちで、余程手慣れてないとできない事ですよね」


< 23 / 223 >

この作品をシェア

pagetop