無愛想で糖度高めなカレの愛
美結ちゃんと話し出すと、会議中と言えども止まらなくなっちゃうのよね。

お局様にギクリとしつつ、えへへと愛想笑いを返した。

セミロングのストレートヘアを耳に掛けながら私も咳ばらいをし、話を本題へ戻す。


「ウチはバレンタインも毎年定番商品しか出さないじゃないですか。ちょっとこのへんで冒険してみませんか?」


皆の表情を伺うように見回しながら、あえて軽い調子で提案してみた。

私がこんなに意見を言えるようになったのはここ一、二年のこと。採用されないことの方が多いけれど、とにかくアイデアを出してみようと思っている。


私達の会社の主力商品は、板チョコとか、アーモンドやウエハースにチョコが掛かったものとか、定番で万人受けするもの。

バレンタインも同じように、生チョコやトリュフといった定番のものに落ち着いてしまっていた。

でも、私は新しいものを取り入れたい。ウチでもこんな商品ができるんですよって、たくさんの人にアピールしたいのだ。


「一風変わったのもいいけどね……。間宮さんが言う、トロッとチョコレートソースが出てくるのって難しそう」


資料を眺める篠沢課長は、軽く眉間にシワを寄せながら言った。

それについての意見を求めるように、おじさま室長が彼の隣に座る男性にたずねる。


「どうかな、河瀬くん?」


皆の視線が、整った顔にスクエアフレームの眼鏡を掛けた、白衣姿の彼に集中する。

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