無愛想で糖度高めなカレの愛
優しく抱きしめられていると、本当に恋人同士みたいだけれど。私達はまだ付き合っていないんだったと、今さらながら思う。

曖昧な関係のまま抱き合ってしまっていたとしたら、どうしよう……。


「あのー、昨日は私達、その……」


もごもごと口ごもる私に、夕浬くんはさらりと一言。


「セックスはしてませんよ」

「セッ……!」


クス、ってはっきり言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!

赤裸々な単語に動揺するも、していなかった事実には安堵する。

真っ赤になっているだろう私の髪に指を絡めながら、彼はふっと笑みをこぼす。


「明穂さん、すごく気持ち良さそうに眠っちゃったんで。しばらく寝顔見てたら、俺もいつの間にか落ちてました」

「そ、そうだったの?」


即寝してしまったことも、寝顔を見られていたことも恥ずかしくて、顔を上げられない。

年上のくせに、そしてただお邪魔するだけのつもりだったのに、こんな姿ばかりさらしてしまうなんて。


「情けない……」

「何で? いいんですよ、可愛い明穂さんをたくさん見られたから」


髪にキスをして夕浬くんがそんなことを言うから、私はますます顔を上げられなくなるのだった。


< 67 / 215 >

この作品をシェア

pagetop