無愛想で糖度高めなカレの愛
バレンタインのチョコレートは無事完成し、営業と広報のメンバーを交えて、宣伝や販売の方法について幾度か会議が行われた。
ここに研究室の人達はいないから、夕浬くんが恵次と会うことにならなくて内心ホッとしている。
恵次は、入ったばかりにもかかわらず積極的に案を出していて、やはりやり手だなぁという印象。
プライベートの彼はよく知っているけれど、仕事している姿はあまり見たことがなかったから、なんだか新鮮だ。
すでに女性社員の多くが彼に魅了されているようで、そのうちいろいろな噂が飛び交いそうだな、と私は予想している。
恵次が来てから一週間が経つある日、用があって工場へと足を運んでいた私は、ついでに一階の休憩スペースへ立ち寄った。
自販機が二台並び、中央には四台の丸いテーブルが設置されていて、二階の会議室の隣にもほぼ同じスペースがある。お昼休みは昼食をとる社員ですぐいっぱいになってしまうけれど、午後二時を回る今は誰もいない。
オフィスでデータをまとめている美結ちゃんにも何か飲み物を買っていってあげようと、自販機にチャリンと小銭を投入した時。
「……明穂」
低く色気のある声が響き、私は自販機と向き合ったまま硬直した。