無愛想で糖度高めなカレの愛
何で? どうしてそんなこと言うのよ……。

意味深な言葉と、彼の瞳に捕われたように動けなくなっていた、その時。


「間宮さん?」


廊下の方から声がして、我に返った。

振り向くと、いつもの眼鏡に白衣姿の夕浬くんが、何かの資料を手にこちらを見据えている。

ドキリとしつつも、今の状況を中断してくれて、どこかホッとした気持ちも大きい。


「……河瀬くん! どうしたの?」


私はさりげなく恵次から距離を取り、何事もなかったように夕浬くんに笑顔を向ける。

彼は特に表情を変えずこちらに歩いてきて、持っていた資料を私に差し出した。


「頼まれてた商品の官能検査のデータです。届けに行こうと思ったら姿が見えたんで」

「そっか、ありがとう」


資料を受け取っていると、缶コーヒーをごみ箱に捨てた恵次が、私の横を通り過ぎる。


「またな。間宮さん」


思いのほか耳の近くで低音ボイスがして、ビクッと肩が跳ねた。

名字で呼んでくれたのはいいけど、わざと近くで囁くなー!

去っていく背中にじとっとした目線を送る私に、夕浬くんも同じ方を見ながら言う。


「あの人、新しく入った営業の手塚さんでしたっけ。すみません、取り込み中でしたか?」

「ううん、全っ然大丈夫!」

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