流れ星スペシャル
ある日書類を見ていると、富樫さんが部屋に入って来たことがあった。
『トシ、お前何見てんねん?』
『この書類ファイルしとこうと思って』
『あー、頼むわ。それ邪魔やねん』
と、富樫さんは言った。
『そんなもん見んでも、レジの月計とかちゃんと見てるし、オレ』
と踏ん反り返った。
『けど、なんか丁寧に書いてくれてはりますよ。社長ちゃいますか、これ書いてんの』
近づいてきた富樫さんに赤い文字が見えるように書類を向けた。
だけど富樫さんはうんざりするように顔を背けたっけ。
『ウザいねん。ゴチャゴチャゴチャゴチャ口出ししよる。文句言うなら自分がやれやって話や。ちゃんとがんばってんねんから、放っといてほしいわ』
『富樫さんががんばってることは、社長もわかってはると思いますよ』
『わからへんわからへん。たまーに店に来るだけで、何がわかるかっちゅーねん』
そう吐き捨てると富樫さんは、オレが退いた椅子にデーンと腰を下ろして、煙草をふかし始めた。
コイツほんまにアホやな。
それがあの人を心底見下した瞬間だった。
そのときのイヤ~な気持ちを思い出したとき、店の前に着いた。