Memories of Fire
「これから好きになっていただける余地がある、と……それは大変嬉しいですね。大嫌いというのが貴女の本音であればですが。まぁ、好きなら好きで何の問題もありません」
「何を訳のわからな――きゃっ」

 突然ふわりと身体が浮いて、部屋のソファへ降ろされる。それからすぐにクラウスの身体が覆いかぶさって、思
わず身体を仰け反らせたソフィーはそのままソファーに押し倒される格好になってしまった。

「ちょっと……何をするの?」
「何って……そうですね。必要最低限の愛の行為、でしょうか。貴女が折れてくれそうにないので、引くのはやめます。正式に婚約もしましたから何も問題ありませんよね? 貴女に会えなかった分、私だって寂しかったのですよ。だから……覚悟してくださいね」

 やけに色香の漂う表情で言い、クラウスはネクタイを緩め、タキシードを脱ぎ捨てる。シャツのボタンも器用に片手で外し、きっちりしていた正装が乱れていく。

「バ、バカ! 脱がなくていいわよ!」
「着たままがよろしいのですか?」

 クラウスはわざとらしく驚いてみせ、ソフィーは頬を真っ赤にする。

「そういう意味じゃな――」
「では、脱いでください」
「や――ッ」

 クラウスがグッとソフィーの背を抱き寄せて、ドレスのジッパーを下げる。ずり下がるドレスを必死に掴み、ソフィーは胸元で両手を握り締めた。

 男性に肌を晒したことなんてないのに、こんな急に……

「っ、こ、こういうことは……っ、しないで、と……言ったでしょう!」
「私はしたいです。貴女のことが好きなので」

 悪びれる様子もなく、クラウスはにっこりと笑ってソフィーの露わになった肩を撫でた。ビクッと彼女の身体が跳ねる。
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