ヴァイス・プレジデント番外編

「ですから幼馴染とか、近所のお友達とか、そういう関係を持たずに育ちました」

「そりゃあ、残念だね」



あぐらをかいた延大さんが、くわえた煙草を上下に動かしながら気の毒そうに言う。

こうした出自を、変に持ち上げたり、貴重な経験だと言ったりしない姿勢に、私は素直に感謝した。

そう、まさしく「残念」だわ。

的確な表現。



「だらしないって、どんなふうに?」

「そもそも母は、父が塾の講師をしていた時の生徒だったんです。17歳も年下で」

「でも、その、関係を持ったのは、ある程度歳がいってからなんでしょ?」

「いえ、16歳だった教え子に手を出し、高校卒業を待たずに、母は私を産みました」



我ながら毒のある表現だと思う。

でも仕方ない、娘の私から見た両親は、そんな印象なのだ。

未来を摘みとられた少女と、保護者面をした暴君。

頬杖をついた延大さんが、私にかからないよう煙を吐く。



「高校生かあ」

「考えられないでしょう?」

「うーん…まあ、俺はね」



母と結ばれた時の父は、今の延大さんよりも年上だ。

それで、自分の年齢の半分にも満たない娘によからぬ思いを抱くなんて、どんな精神なんだろう。



「ご両親、仲はいいの?」

「別れたら、母は暮らしていけませんから」



せっかくの涼しげな食後の甘味を、気づけば私は、味わうゆとりもないまま食べてしまっていた。

つくった人にも、甘味自体にも申し訳ないことをした気になって、ため息が出る。



「久良子ちゃんは、よくない男に引っかかりそうだねえ」

「そうお思いになります?」


< 11 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop