ヴァイス・プレジデント番外編
「もしかして、5番街の?」
「もちろん」
アメリカにも寄ったと言っていたから、まさかと思ったら、本店でわざわざ購入してくれたのだ。
映画の舞台にもなっている、あの有名なニューヨークの店舗だ。
気をつけて扱わないとちぎれてしまいそうな、華奢なチェーンを感嘆の思いで見つめる。
なんて素敵なんだろう。
けど。
「ここまでのもの、いただく理由がありません」
「じゃあ、誕生日プレゼントってことで」
…私の誕生日は、春だ。
早めというにも、遠すぎる。
そう言うと、延大さんが、なぜか嬉しそうに笑った。
「ほんと、俺も春。4月」
「あら、私も4月です」
聞けば彼は上旬で、私は下旬。
思わぬ偶然に、顔を見合わせて笑った。
「じゃあ4月には、私から何か贈らせていただきますので、延大さんはくれぐれも、何もご用意なさらないでくださいね」
「忘れなければね」
びっくりするほど大振りのカキのお刺身を、満足げに口に運びながら、延大さんが眉を上げてみせる。
これは、きっとまた何かくれるつもりだ。
もう、いったい何をお返しすればいいんだろう。
* * *
「久良子が何か悩んでるみたいよ」
「あっ、ほんとだ」
暁と和華がそう会話するのに、えっと思いながら振り返る。