ヴァイス・プレジデント番外編

「そんなふうに見える?」

「久良子が剣山じゃなくてオアシスを使う時は、何か迷ってる時なのよね」



暁が漆黒の髪を揺らしながら、ふふっと笑う。

私は思わず、これから活けようとしていた3台の花器を見た。


確かに、今回はオアシスを使おうと思った。

でもそれは、洋風にアレンジしようと思ったからで。

なぜかというと、いただいた花束をばらした花材が、背丈の低いものばかりだったからで。

別に、剣山でびしっと決める自信がなかったわけじゃなくて。



「………」

「黙っちゃったよ」

「気の済むまで悩んだらいいのよ」



好き勝手言うふたりに、もう、と思いながらも、自分の迷いを気づかせてくれたことに感謝した。

私ったら、迷ってるの?

何を?


そこに、デスクの電話が鳴った。



「秘書室、安杖でございます」



かけてきたのは、会長と一緒にこの会社を設立し、現在は名誉会長職についている、会長のご友人だった。



『急なんだが、例の携帯キャリアのトップと、今夜、会えることになってね。ぜひ堤にも同席してほしくて』

「かしこまりました。調整のうえ、折り返しご連絡いたします」



PCで会長のスケジュールを調べると、指定された時間帯が「プライベート」となっている。

これは、ご本人に訊かないとダメだ。



「和華、お花の続き、任せていい?」

「オッケー」



私は会合の場所の地図と、そこまでの移動時間を調べて出力すると、花材たちを放り出して、会長室へと向かった。

< 18 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop