ヴァイス・プレジデント番外編
「そんなふうに見える?」
「久良子が剣山じゃなくてオアシスを使う時は、何か迷ってる時なのよね」
暁が漆黒の髪を揺らしながら、ふふっと笑う。
私は思わず、これから活けようとしていた3台の花器を見た。
確かに、今回はオアシスを使おうと思った。
でもそれは、洋風にアレンジしようと思ったからで。
なぜかというと、いただいた花束をばらした花材が、背丈の低いものばかりだったからで。
別に、剣山でびしっと決める自信がなかったわけじゃなくて。
「………」
「黙っちゃったよ」
「気の済むまで悩んだらいいのよ」
好き勝手言うふたりに、もう、と思いながらも、自分の迷いを気づかせてくれたことに感謝した。
私ったら、迷ってるの?
何を?
そこに、デスクの電話が鳴った。
「秘書室、安杖でございます」
かけてきたのは、会長と一緒にこの会社を設立し、現在は名誉会長職についている、会長のご友人だった。
『急なんだが、例の携帯キャリアのトップと、今夜、会えることになってね。ぜひ堤にも同席してほしくて』
「かしこまりました。調整のうえ、折り返しご連絡いたします」
PCで会長のスケジュールを調べると、指定された時間帯が「プライベート」となっている。
これは、ご本人に訊かないとダメだ。
「和華、お花の続き、任せていい?」
「オッケー」
私は会合の場所の地図と、そこまでの移動時間を調べて出力すると、花材たちを放り出して、会長室へと向かった。