ヴァイス・プレジデント番外編
物につられるわけではないけれど。

物をあげるというのは、非常にわかりやすく、好意を感じさせる行為ではある。


特にアクセサリーなんて。

私が身につけるところを想像しながら選んだんだろうか、とか。

男性ひとりで、どんな顔をしてジュエリーを買ったんだろうか、とか。

どうやって渡そうか、なんて、頭を悩ませたりしたんだろうか、とか。

想像すると、嬉しいことが多すぎる。


手首で輝くブレスレットを、見るともなく眺めた。

畳好きの私だけれど、忙しくてあまり部屋にかまう時間がないので、衛生面から家はフローリングだ。

けれどなるべく床に近いところで生活したく、ベッドではなく、すのことマットレスで寝ている。


たぶんこれは、海外生活が長く、自分のルーツと言えるものを持たないことへの、コンプレックスの表れだろう。

学生時代、着付けや華道などの和文化を積極的に学んだのも、そのせいだと思う。


そのマットレスに寝転がり、顔の前に腕を掲げる。

綺麗なブレスレット。

これはどう考えても、本命向けのプレゼントだわ。


どうしよう。

延大さんが、これといった言葉を突きつけてこないことに甘えて、私はずるずると自分の立場を明確にせずにいる。


なんとなくだけれど。

私が彼に何を贈るかで、ふたりの関係がどこへ転がるのかが、決定的になる気がしていた。


 * * *


「わかった、来月に、行ってくるわ」



電話口でそう言うと、母が、私だけが頼りだとか、ごちゃごちゃとまとまりのないお礼を述べる。

盲目的に父についていくだけで、社会性のない母は、筋道立てて物事を話すことが苦手だ。

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