ヴァイス・プレジデント番外編
3月に入った今日、母が電話をしてきたのは、一族のお墓に関する相談のためだった。

我が家は先祖代々のお墓が秋田にあり、長男である父も嫁である母も、自然な流れとしては、そこに入ることになる。

けれど両親は、数年前から日本に腰を落ち着ける際、首都圏に家を構え、墓地もこちらに買い、骨をそこにうずめる用意をしていた。


父の意向としては、父の両親の骨を分骨して、首都圏の墓に納めたいらしい。

それに対して、本家筋である父の従兄弟が文句をつけてきたのだ。


そんな問題、知らないわよ、自分たちで解決しなさいと言いたいけれど。

都合の悪いことには耳を貸さない父と、およそ実際的な問題を取り回すのには不向きな母が、そんなことできるわけもない。

結局私が窓口となって、親族と交渉することになりそうだった。

わざわざ秋田まで行って。


来月と言ったのを、母は少し不満に思ったようだけれど、この忙しい年度末に、そんなことに割く時間があるわけがない。

いつまで庇護下のお嬢さんのつもりなの。

しっかりしてよ。


こんな気分で眠りにつくのは嫌だったので、何か明るい、楽しいことを考えようとして、浮かんだのは延大さんの、陽気で能天気な声だった。

彼の声は独特だ。

明るいんだけれどマイルドで、耳障りでない声。

会長が若かった頃は、あんな声だったんじゃないかしらと思わせる、不思議な響き方をする声だ。


彼の誕生日は、来月。

そろそろ何を贈るか決めないと、準備する時間がなくなってしまう。


シャワーは朝浴びる派の私は、メイクを落とすために洗面所へ行き、水がお湯になるのを待ちながら、また考えた。

たいていのものは自分で買えてしまうだろう。

食べ物やお酒は無難だけれど、なくなってしまうものは、やはり避けたい。

うーん、と考えているうち、お湯をだいぶ無駄に流していたことに気がついた。



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