ヴァイス・プレジデント番外編
* * *
「久良子ちゃんて、実は飲めるでしょ」
あら、ばれた。
のぞきこむように私を見る延大さんに、にこっと笑ってみせる。
「どうしておわかりに?」
「うーん、ほんとの下戸は、ぴんと来るんだよね、こういう場だと」
確かに、延大さんがつれてきてくれるお店の大半は、食事と一緒にお酒を楽しむお店だ。
私に合わせて、延大さんは一度も飲んだことがないけれど、やはり品書きの見かたや選びかたに、飲み慣れている雰囲気は出る。
同じことで、私もそれが出ていたんだろう。
「飲むの、好きじゃないの?」
「ええ、つきあいでは飲みますし、弱くはないんですが。好きではないです」
「味が、ってこと?」
延大さんが、煙草を口の端に挟んで首をかしげる。
この人、そうやってると、棒つきの飴をくわえた子供みたいだわ。
「いえ、酔う、ということ自体が」
私は自分で自分をコントロールできなくなるというのが、どうにも好きじゃない。
若い頃は、自分の限界がどの程度なのか知るために、無茶な飲み方をしたりもしたけれど。
だいたいつかめたし、やはり酔うのはあまり気持ちのいいものではなく、最近では、どうしても避けられない時以外は飲まない。
そして何より、父が、酒乱とまではいかないけれど、あまりよくない酔い方をする酒好きなのだ。
「陰気なお酒というんでしょうか、こう、内にこもってしまうような」
「ああ、いるね、そういう人」
もったいないよね、と言いながら、延大さんが小鉢にお箸をつける。
その中身を見て、あっと思った。
山ウドだ。
そうか、こうして食事につれ出してくれるようになって、もう、一年がたとうとしているのね。