ヴァイス・プレジデント番外編
「これ、軽くて飲みやすいから、たぶん抵抗ないと思うよ」
「ありがとうございます」
軽くグラスを掲げて乾杯する。
彼の言葉のとおり、フルーティで口あたりのいい、爽やかな白だ。
鮮魚を上手に使った料理にも合って、するするとグラスが進む。
「でも、飲めないわけじゃないんだもんね、そもそも?」
「そうですね。ですが味の好みでいえば、こういう甘めで軽いのが嬉しいです」
なるほどね、と鮮やかにナイフを扱いながら、妙に真剣に延大さんがうなずく。
いろいろと覚えておいてくれるつもりなんだろう。
「会長は、経過観察中なんでしょうか、今は?」
「そうだよ。今のところ一度も悪い結果は出てない」
「不安でしょうね」
「誰だって、いきなり身体を壊す可能性は持ってるんだし。抱えてる爆弾がわかってるぶん、気は楽だなんて言ってるけどね」
そんな話を、親子でしたりするのね。
オープンで気づかいにあふれている、素敵な関係。
何か、会長の身体のためにできることはないかしら。
予防のできる病気ではないと聞くけれど、せめて他の部分での心配が皆無になるよう、気を配れたら。
けれど、そんな状態なのに煙草もやめない会長の頑固さを思うと、食生活を変えさせたりするのは、なかなか難しそうだ。
お箸も用意されている気の張らないコースで、白身魚のメインを楽しんでいると、延大さんと目が合った。
「親父のこと考えてるでしょ」
面白くなさそうに言われ、すみません、と笑って返そうとして、言葉を飲み込む。
酔ってきた。
急に口をつぐんだ私を、延大さんが不思議そうに見て、どうしたの、と言った。
答えたくても、ろれつが怪しい気がして、口を開く気になれない。
これだから、お酒は嫌なのだ。
この、自分を制御できなくなる感じ。