ヴァイス・プレジデント番外編
「久良子ちゃん?」
のぞきこんでくる彼は、相当にお酒に強いんだろう。
もうボトルはほとんど空で、私はそんなに飲んでいないというのに、いつもとまったく変わらない。
返事をしたいけれど、酔った口ぶりを聞かれるのが嫌で唇を噛む。
困って目を泳がせていると、延大さんが、ようやく気がついたように、ああ、と目を見開いた。
「酔っちゃった?」
うなずくと、なぜか嬉しそうに笑う。
「あんまり、そう見えないね。たぶん本当は、そこそこ強いんだろうね」
そうなんだろう。
昔は、相手のほうが先につぶれることも多かった。
またうなずくと、彼がギャルソンに目で合図をして、私のグラスにワインをつがせた。
とことん飲ませるつもりなのね。
少しふくれてみせると、延大さんがいたずらっぽく眉を上げる。
「俺の誕生日でしょ」
そのとおりだ。
そして私が飲むことがプレゼントなんだから、飲まないわけにはいかない。
満たされたグラスに私が口をつけるのを見て、延大さんが満足げにうなずいた。
「喋るのは、嫌?」
うなずく。
「俺は、酔っ払っちゃった久良子ちゃんの声、聞きたいけどね」
私は聞きたくありません、という意味で首を振ると、頑なだなあ、とワインを飲みながら延大さんが笑う。