ヴァイス・プレジデント番外編
「じゃあ、イエスかノーで答えられる会話にしようかな。そのワインは気に入った?」
すごくおいしいので、にっこりとうなずく。
食事も? と訊かれ、続いてうなずく。
「今日は、楽しい?」
ちょっと考えて、うなずく。
お酒のせいで、思考が完全に思いどおりにならないのが腹立たしいけれど。
それでもやっぱり、楽しい。
延大さんが嬉しそうに笑った。
その笑顔が嬉しくて、私もまた笑うと、それを見た延大さんがなぜか、ふいに真顔になる。
つけあわせの緑野菜を口に入れようとしていた彼は、その手を止めて、少し考えるように目線を落とし、急に黙ると。
目を上げて、私をじっと見た。
「行こうか」
え。
私が反応する間もなく、延大さんはグラスに残ったワインをひょいと飲み干すと、ナプキンをざっとたたんでテーブルに置く。
食べかけのメインもそのままに席を立って、私の手をとり店の出口へと向かった。
えっ?
「お客様、何か、失礼でも」
「ううん、堪能したよ。中座して申し訳ないってシェフに伝えて」
慌てて飛んできたメートルに、足早に歩きながらそう伝え、追いかけてきたもうひとりから鞄を受けとる。
同じワイン、あとで部屋に届けてね、と言い残すと、優雅に輝くロビーを突っきって、ちょうど来たエレベータに私を引っぱりこんだ。
天井まで鏡張りになっている壁に押しつけられて、キスをされる。
まだドアも閉まりきっていないのに、とあせっているうちに、箱が動きだした。