ヴァイス・プレジデント番外編
直感像記憶、といったかしら。

見たものを写真のように記憶して、後から記憶内で検索したり拡大したりして、情報を探すことができる能力。

私はどうやら、それに近いものを持っているらしかった。


教科書やスピーチ原稿などは、見たまま記憶して、ほとんど忘れない。

今回も、社長の顔に覚えがあると感じた時、脳裏に浮かんだのは緑色の一色刷りのページの映像だった。

右上にページ1/4ほどの写真があり、そこで彼が向かって左を向いて笑っている。

頭の中でページの右隅を拡大してみると、業界誌のロゴがあった。

だから、迷わずバックナンバーをあたったのだ。


そんな話をかいつまんで説明すると、会長が言葉をなくしたように私を見た。



「…うらやましいばかりだね」

「芸がなければ、持ちぐされです」



便利ではあるけれど、記憶をそのまま絵にできる画力もないし、丸暗記なんてやろうと思えば誰だってできる。

ああでも、ピアノを暗譜するのは楽で助かった。

だからといって、いい演奏につながるわけではないけれど。



「私にとっては、充分な芸だよ」



これもね、と言ってサプリのトレイを指してみせるのに、笑ってしまった。


それは芸ではなく、好意です、純粋な。

そこから来る、気遣いと献身ですわ。


私はいつだって、あなたのことばかり考えております。

あなた専用の秘書ですもの。



< 8 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop