ヴァイス・プレジデント番外編
* * *
「俺を妬かせたいとしか思えないよ」
会長の話が止まらない私に、延大さんがこぼした。
彼は初めての食事以来、月に一度は必ずこうして夕食に誘ってくれる。
いや、お誘い自体は週に一度くらいなんだけど、私の都合や腹づもりのせいで、実現するのが月に一度なだけだ。
「あの社長は、とんだ食わせ者だったらしいですわね」
「うん、ほとんど架空の事業をでっちあげて、形ばかりの商品を出しては、利益を持ち逃げみたいな」
例の、怪しげな元事業推進部長は、我が社との競合に敗れて以来、そんな末路をたどっていたらしい。
なんとも気の毒な話。
仕事を純粋に楽しめない男の人は、人生を損してるわ。
「間違っても、うちが仕事上でつきあったりしなくてよかったよ。久良子ちゃんが気づいてくれたらしいね」
「僭越でした。あんな情報などなくても、会長ご自身が、どこかで絶対にお気づきになったはずです」
「出た、親父賛歌」
延大さんがほがらかに笑う。
すでに私の好みをほぼ把握したらしい彼は、今日もこうして、家庭的な雰囲気で旬の和食を楽しめるお店に連れてきてくれた。
この人、私の他に仲よくしてる女性、いないのかしら。
いかにも女好きのしそうな外見をしているくせに、指一本私に触れてこない不思議な男性を、つい観察した。
ちょっと日本人離れした、彫りの深い、華やかで甘い顔立ち。
いつもこんな調子だから気づきにくいけれど、実は相当に整った面立ちだわ。
生まれつきらしい明るい色の髪は、ゆるくウェーブして、だらしないと色っぽいのぎりぎり中間くらいにセットされている。
170センチ近い私でも少し見あげるくらいの長身で、すらりと姿勢よく、さすが会長の息子と思わせた。
「何か、運動なさってました?」
「俺のこと、訊いてくれるんだ」