ヴァイス・プレジデント番外編
「はい、和華には肉ね」
「失礼ね」
ひどい言い草とともに暁が渡してくれたのは、ケチャップとマスタードのたっぷりかかったフランクフルトだった。
確かに私は肉好きだけれど、何もここで言うことないじゃない。
無難にフライドポテトを渡された和之さんは、私に失礼にならないよう、笑いをかみ殺している。
暁はすまし顔で、私にはとても食べられない、激辛のスナックの袋をバリっと開けた。
「スカートを買うわ」
「さっき買ったばかりじゃない」
「あぶく銭は、さっさと使うに限るのよ」
ふたつのレースで、あっさりと2万近くの儲けを出した暁は、払戻し窓口から戻ってくると清楚な笑みで言った。
ジョッキーへの声援を、周囲のおじさまがたに負けないくらい、いや勝るくらい張りあげていた暁が興奮のあまり握りつぶしていたスナック菓子の袋を、途中でそっと和之さんがとりあげたのを私は見た。
暁とはそこそこ長いつきあいで、同い年だし、特殊な職場ということもあり、仲のよい同僚だと思っていた。
しかしあの可憐なお嬢様がレースを前にすると、ここまでただのおっさんと化すとはさすがに思っていなかった。
和之さんも少しの儲けを出したようで、何かごちそうしましょうか、と律儀に言ってくれる。
断ろうとした私より先に、じゃあどこか入りましょうか、と暁がほがらかに笑った。
「私が一番儲けたから、ふたりにごちそうしてあげる」
「じゃあ、暁さんの分は僕が持ちます」
馬券場を出ながら、ふたりが顔を見あわせて楽しそうに笑う。
なんだこれは、微笑ましい。
でも、と私は、ちょっとした引っかかりとともに暁を眺めた。