ヴァイス・プレジデント番外編
「延大さんは、お元気?」
駅前の綺麗なティールームで、スコーンと紅茶が運ばれてきたところで、暁が私と同じことを訊いた。
私たちの対面に座った和之さんは再び、年末以来会っていないと説明してくれる。
あの…、と言いにくそうに、和之さんが私たちを交互に見た。
「久良子さんは、その、どうして」
「久良子はね、ご両親の、仲のいい姿をあまり見たことがなくて。結婚とかそういう発想ができなかったのよ」
しっかり煮出されたロイヤルミルクティを飲みながら、暁があっさりと答える。
「でも延大さんのことを好きだったわ。たぶん今でも好きだと思う」
「それなら」
よかった、と言おうとしたんだろう、和之さんが言葉を飲み込んで視線をさまよわせた。
確かに、よくはないものね、全然。
切なさともどかしさが増えるだけだ、そんなの。
「久良子もバカだけど、延大さんもバカだわ」
「僕には、なんとも」
きっぱりと暁が言うのに、和之さんが困ったように笑って、言葉を濁した。
無理もない、彼はまだ24歳か25歳になったばかりか、そのくらいだ。
そんな話、ぴんと来ないだろう。
私は好奇心がむき出しにならないよう、自制しながら尋ねた。
「奥様は、どんな方ですか?」
「いい人なんです、それが。明るくてさっぱりしていて、切り盛りが上手で」
まるでそれが残念でもあるように和之さんは言い、そのことに気がついたのか、しまったという顔をする。
「兄は、恵まれていると思いますよ。本人もそう言ってます」
だけど、という言葉を飲み込むように視線を落として、ストローを噛んだ。
久良子と延大さんが、どれだけ仲がよかったかを知っている人間にとって、彼の突然の、聞いたこともない女性との結婚は衝撃だった。