ヴァイス・プレジデント番外編
それは彼の兄弟たちにとっても同じことだったらしく、ヤマトさんもすずちゃんも、そのニュースには呆然としていた。



『お見合いのお話があったっていうことは、聞いていたんです』



でもまさか。

本当に決めるなんて、と悲しそうな顔をしていたすずちゃんを思い出す。



「ヤマトさんたちこそ、そろそろ結婚の話が出ても、おかしくない頃よね」

「そうだね、すずちゃんも今年27歳だもんね」



まだ私たちと一緒に秘書をしていた時代からおつきあいを始めたヤマトさんとすずちゃんは、はた目にも微笑ましいカップルとして順調に愛を育んでいるようで、久良子の恋がああいう結果に終わった今、私と暁の楽しみでもあった。

けど和之さんは、ちょっとさみしそうに微笑むと、首を振る。



「兄貴は、ためらうでしょうね。少なくとも延大が今の状態を続ける以上」



どういうこと、と思わず私と暁の声が重なった。

和之さんは、手つかずだったスコーンのバスケットを、どうぞ、と私たちのほうに押しやってくれながら話しだす。



「兄貴はああ見えて、意外と義理堅いところがあって」

「兄貴って、ヤマトさんのことですよね?」



念のため確認すると、一瞬きょとんとした和之さんが、ああ、とうなずいた。



「そうです」

「和之さんが"兄貴"と呼ぶのは、ヤマトさんのことなのね」

「延大のほうは、僕が7歳の頃にもう家を出てましたから。感覚としては実の兄より、従兄弟とか、そういう感じで」



暁の指摘に、どこか恥ずかしそうに、そう答える。

確かに11歳も離れていたらそうなって当然だろうなあ、と妹がいる私は考えた。

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