ヴァイス・プレジデント番外編
一番に好きな人との結婚をあきらめた人。

結婚というものを拒否した結果、好きな人も遠ざけてしまった人。

自分が一番でないのをきっとわかっていて、それでも結婚を決めた人。

大事な人への忠義から、自分の幸せを後回しにしようとする人。

それに巻きこまれる人。

みんな、難しい。


紅茶をひと口飲んだ暁が、ふうと小さく息をついた。



「私も、久良子が幸せになるまでは、結婚する気にならないわ」



あ。

バカ。


和之さんをうかがい見ると、彼はそう表情を変えはしないものの、手にしたグラスを空中でとめたまま、暁をじっと見つめていた。

その視線が、暁を離れて私に向く。

目が合った瞬間、私が気がついていることに彼も気づいたらしく、はっとその明るめの瞳を見開いて、行き場をなくしたように視線をさまよわせた。



「…お相手、いるんですか」

「相手だけはね、ずっといるの。でも、いまいちタイミングをはかりかねてて」



話を促すように、柔らかく微笑んだ和之さんが小さくうなずく。

暁は許婚ともいうべき幼なじみがいることを話し、きっかけさえあればいつでも結婚したいわ、と微笑んだ。



「お互い、いい歳だしね。同い年だから」

「暁さんが結婚したら、久良子さんにも何かいい影響があるんじゃないですか」



そうかしら、と困ったように首をかしげる暁に、和之さんが笑いかける。

組んでいた脚をほどいて、座っている椅子に両手をついて暁と会話する彼の姿は、年相応か、それより幼いくらいに見えて、私はなんだか切なくなった。

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