ヴァイス・プレジデント番外編
「あんた、和之さんの気持ち、知ってたね」
「責めないで。私だって、どうしたらいいのかわからなかったんだから」
寄るところがあると私たちに別れを告げて和之さんが店を出た後、対面に移動した暁に、私は切り出した。
「許婚なんて、うんざりって言ってたくせに」
「そう思ってた時期もあった。でもさっき言ったことは本当よ、私が結婚するなら彼しかいないわ」
おかわりを頼んだアイスのロイヤルミルクティを飲みながら、気持ちいいほどに暁が言いきる。
「和之さんは、私なんか見てたらダメよ」
「かわいそうに、傷ついたよ」
「男の子は、そうやって大人になってくのよ」
すましてストローをくわえる暁の、声に潜む罪の意識に、私は気がついた。
わかる気がする。
彼は私たちみんなの末の弟のようなもので、傷ついてほしくない、できることなら望みを全部叶えてあげたい、そう思わせる存在だった。
視野の広い彼は、ふたりの兄の置かれた微妙な立場が理解できすぎてつらいだろう。
まだそんなものを見るには、若すぎるのに。
「ヤマトさん、本当にすずちゃんと結婚しないつもりかな」
「義理堅いというより、忠犬よね、そこまでいくと」
ご主人様がごちそうに手をつけるまで、自分もおあずけ、なんて。
そう吐き捨てる暁に笑った。
暁はすずちゃんびいきだから、どんな理由があろうと、あの子を待たせるヤマトさんは許せないんだろう。
私は、そうだな、どちらの気持ちもわかる。
久良子が幸せにならない限り、私も幸せになろうという気は起こらない。
だけど、そのことで大事な誰かを待たせるなら、きっと考えてしまう。
難しい。
どうしてこんな、難しいんだろう。