許嫁な二人

 第一回目の校内掲示係の話し合いが空き教室でおこなわれた。

 係長になったのは、3年1組の代表の生徒で、彼は今、
 みんなの前にたって、大まかな作業日程と分担分けについて
 しゃべっている。

 どのクラスも二人づつ出席しているが、唯のとなりの席だけが
 空いていた。

 来るとは思っていなかったからいいのだけれど、それでも
 なんとなく唯がため息をもらしたとき、ガラっと勢い良く戸があいて
 来るはずが無いと思っていた人が、姿をあらわした。

 みんなが驚きで、口をぽかんとあけている中を、透は堂々と歩いて
 唯の隣の席にどっかと座る。

 よっぽどびっくりしたのか、再びしゃべりはじめた係長の生徒は
 どもっていた。





   「あの瀬戸 透が掲示係の作業にちゃんと出席してるんだって?」



 お弁当のウインナーを箸でつまんで、有未が声をひそめる。



   「うん、そうだよ。」



 唯の返事に、有未の大きな目が落ちんばかりに見開かれた。



   「いったいどういうこと? 唯、あんたどういう技をつかったの?」

   「何もしてないよ。」

   「うっそー。」



 つまんでいたウインナーがぽろりと落ちた。
< 101 / 164 >

この作品をシェア

pagetop