許嫁な二人
第一回目の校内掲示係の話し合いが空き教室でおこなわれた。
係長になったのは、3年1組の代表の生徒で、彼は今、
みんなの前にたって、大まかな作業日程と分担分けについて
しゃべっている。
どのクラスも二人づつ出席しているが、唯のとなりの席だけが
空いていた。
来るとは思っていなかったからいいのだけれど、それでも
なんとなく唯がため息をもらしたとき、ガラっと勢い良く戸があいて
来るはずが無いと思っていた人が、姿をあらわした。
みんなが驚きで、口をぽかんとあけている中を、透は堂々と歩いて
唯の隣の席にどっかと座る。
よっぽどびっくりしたのか、再びしゃべりはじめた係長の生徒は
どもっていた。
「あの瀬戸 透が掲示係の作業にちゃんと出席してるんだって?」
お弁当のウインナーを箸でつまんで、有未が声をひそめる。
「うん、そうだよ。」
唯の返事に、有未の大きな目が落ちんばかりに見開かれた。
「いったいどういうこと? 唯、あんたどういう技をつかったの?」
「何もしてないよ。」
「うっそー。」
つまんでいたウインナーがぽろりと落ちた。