許嫁な二人
透はちゃんと係の作業に参加している。
それどころか、結構うまくデザインをしては立て看板を
ぬりわけていくので、みんなに一目おかれている。
みんなに打ち解けないという認識があったからか、最初はだれも
透に話しかけなかったけれど、今では、みんなが透のアドバイスを
もらうためにやってきては、話をしていく。
そのひとつひとつに透はぶっきらぼうでああるが、丁寧に答える。
(みんな誤解していただけだ、透くんはやさしいもの)
みんなの中に透がいることが、唯にはうれしい。
絵筆を握る透をみていたら、”なに?” と透がたずねた。
”別に”とあわてて、手元に視線をもどしたけれど、頬に熱が
あつまって恥ずかしかった。
しばらくしたら、今度は透が自分をじっとみているのに気づいて
唯は顔をあげると
「なに?」
と問いかえした。
「ついてるぞ。」
「えっ。」
「ペンキ。ここんところ。」
そういって透が鼻の下をゆびさす。
「えーっ。」
絵筆をほうりだして、慌ててカバンの中から鏡をだしてのぞいたら
白いペンキがぺたりとついていた。