許嫁な二人

 文化祭用の立て看板や横断幕の制作作業は順調にすすんでいたけれど
 やはり最後の方は日にちがおしてきて、最後に作業がおわったときは
 もうとっぷりと日がくれていた。



   「さようなら。」
  
   「うん、ばいばい。」



 制作したものをすべて一カ所にあつめて、集合写真を一枚とって
 それからみんな、そそくさとそれぞれの方向へ帰っていく。

 校舎の外に出てみて、あまりの暗さに足がとまったところを
 後ろからぽんと頭をたたかれて、唯はふりかえった。

 すぐ横に透がたつ。



   「さっさと行くぞ。」



 そう言って透は歩き出した。

 ぽかんとその姿を見送っていると、ふりむいた透があきれたような
 声をだした。



   「何してる?」

   「えっ?透くんは何してるの?」



 なぜそっちに歩き出しているのか?帰る方向はちがうはずなのに?



   「暗いだろ、バス停まで送る。はやくしろ。」



 そう言われて、唯はあわてて透をおいかけた。
< 106 / 164 >

この作品をシェア

pagetop