許嫁な二人

 こうして並んで歩いていると昔を思い出す。

 自分の隣にはいつも唯がいたのに、いつの間にか遠くなって、、、。

 でも、文化祭までのこの1ヶ月はちがった。

 唯を身近に感じ、いろんな奴と話しをし、、、

 透は戸惑いながらも、それを悪くないと思っている自分がいること
 を感じとっていた。

 いつものように作業をさぼることもできた。

 でも、唯一人に責任をおしつけるわけにはいかない気がして。

 最初は居心地がわるかったが、いつしかそれも慣れて。

 作業の手を止めて横をみれば、いつもそこにふんわりと笑う唯がいた。

 そうして、今も透のとなりで、作業中にあった面白かったことを
 思い出ししゃべっている。

 唯にはわからないように、満足な笑みをもらし、二人で道の角を
 まがったとき。



   「よう、瀬戸。久しぶりだな。」



 と、耳障りなガラガラ声が聞こえた。





 
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