許嫁な二人

 久しぶりに唯は熱をだした。

 悠が心配して、一度訪ねてきてくれたけれど、唯の熱は
 長く続いて、逢えなかった。

 熱にうなされながら思い出すのは、透の顔。

 いろんな顔があったけれど、唯にむける瞳は暖かかった気がする。

 でも、熱が下がって、一番最初に思い出したのは、綺麗な女の人
 と抱き合う透の姿だった。



   「本当にどうしたの? もう4日だよ。」



 授業のノートを手渡しながら、有未がベッドのわきにこしかけて
 唯の顔をのぞきこんだ。



   「ごめんね、明日からは行けると思う。」

   「うん、そうしてよ。唯と一緒の高校生活も1月末までなんだから。」



 高校3年生の三学期は1月末までしか授業がない。

 月末にテストをすませれば、あと卒業式の前日の式練習まで自由登校だ。

 冬休み中にだした熱はとうに下がっていし、学校にいけないことは
 ないのだが、唯は今、透にあうのが嫌なのだった。

 でもいつまでも休んでいるわけにはいかない。
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