許嫁な二人
久しぶりに登校した日、唯は一日中、体の何処かで透の
存在を感じていた。
絶対に透の方は見ないようにしたし、声もきこえないようにした。
でも、同じ教室に透がいること、同じように教科書を読み、話し、
息をして、立ったり、座ったり、歩いたりしていることを唯の
全身の神経が感じとっている。
透はいつものように唯には話しかけてこない。
恋人とのラブシーン唯にを見られたことを、
透はなんと思っているのだろう。
なんとも思っていないのかもしれないと、一日の授業を終えるころには
唯もそう思い始めていた。
自分が意識過剰になっているんだと唯は、心の中で自分を笑った。
補習がある有未にさよならを言い、昇降口で靴に履き替え、
目をあげたら、透がたっていた。
「バス停まで送る。」
そうボソッとつぶやいて透は歩きだした。
でもついてこない唯に気がついて、振り返る。
「唯?」
そんな透をみながら、唯は頭がかっと熱くなるのをかんじた。
反対に手足がしんと冷えていく。