許嫁な二人

 言わなければ、、と思うが言葉が頭の中をぐるぐる回るだけで
 言葉になってでてこない。

 でも、その中のひとつがやっと殻をやぶって、口からとびだした。



   「い、行けないよ、、ダメだと思う。彼女がいるひとに
    送ってもらうのは、、、。」



 唯の言葉を聞いた透の顔が訝しげなものにかわる。



   「彼女?」

   「だって透くん、彼女いるじゃない、、、私、見たもの。」



 ああ、と納得したような顔をした透は、ぽつんと呟くように言葉を
 おとす。



   「彼女じゃない。」



 彼女じゃない、、、。

 その言葉を聞いた唯の心に急速に湧きあがってきたのは、
 なんとも言い難い、怒りだった。



   「彼女じゃない人と、あんなに仲よさそうにするんだ、
    透くんは!」



 そう叫ぶように言って、唯は走り出した。

 透の脇をすりぬけて。


 透は追ってはこなかった。
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