許嫁な二人
 
 つれてこられた喫茶店は、カウンターの他にボックス席が二つあって
 それで部屋いっぱいの小さな店だった。

 店主にやる気がないのか、はたまたいつもそういう店なのか
 唯たちの他にお客はいない

 唯は膝の上に手を置いたまま、コーヒーの湯気が薄く立ち上るのを
 見ていた。



   「碓氷さん、本当に私がだれか、わかっていないでしょう?」



 カチャンとコーヒーカップをソーサーにもどして、目の前にすわる
 その人は言った。



   「本当は、、、って?」

   「ふふふ、私、そんなに変わったかしら。」

   「?」

   「碓氷さんはちっとも変わらないわね、小学生のときのまま。」

   「あっ。」



 そう言われて、唯の中にある名前が浮かび上がった。



   「佐伯さん、、、。」

   「そう、佐伯美穂よ。」



 
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