許嫁な二人
偶然、透と再会してから、透は1週間に1度は必ずここにやってくる。
カメラを構えて、神社のあちこちを写していたとおもったら、神主の誉と
親しげに話しをしたりしている。
幼馴染だと千賀子たちには言ってあるが、透があまりにも頻繁にやってくるので
最近はからかわれるようになっていた。
二人であって、特別なにを話すわけでもない。
お互いの生活のことや、思い出ばなしなど、、、。
最初、唯が恐れていたように、透の口から佐伯美穂のことも、あの日小里に
行かなかったことを咎める言葉もでてくることはなくて、唯はほっとした。
あの日、美穂は”透と一緒に東京へ行く”と言った。
だから二人はいっしょにいるのではと思ったがそうではないようだ。
詳しく聞いてみたいが、聞くのがこわい。
どちらにしろ、彼女の一人や二人いたっておかしくはない。
昔から透はもてていた。
今だってきっとそうに違いない。
もう勘違いをして、みじめな気持ちになるのはいやだと唯は思う。
今、透が唯のそばにいようとするのは、東京にいて故郷を懐かしく
思う気持ちと同じなのだ。
それに、、、。
考え事をして歩いていたら、草履を木の根にひっかけて、唯はころびそうに
なった。
とっさに透が唯の体を支えてくれて、
「危ないな、足元。」
と呆れた声をだした。
「おぶってやるよ。」
そういわれて唯は首をふった。