許嫁な二人

   「でも、それじゃあ、歩けなくないか。」


 透の視線が足元にむけられているので、見ると、草履の鼻緒が
 取れていた。



   「わ、私、重いもの。」

   「大丈夫だ、神社はもうすぐそこだし。」



 そう言って、透は唯に背中をみせてしゃがむ。



   「はやくしろ。」



 そういわれて、唯はおずおずと透の背中に体をあずけた。



   「似たようなことがあったよな。」



 そう透にいわれて、



   「うん、私も同じこと考えてた。」



 と唯は答える。

 修学旅行先で、しつこい酔っ払いから逃げて走ったあと、歩けなくなった
 唯を透がおぶってくれた。



   「時間が巻き戻せるなら、あの時だな。」



 ぽつりとそんな言葉が透の口から洩れた。
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