許嫁な二人

   「ラーメン食ってくか?」

   「いや、いい。」



 二人で、亮平や共通の友人の話をし、しばらく間があいたところで
 透は尋ねた。



   「唯の親父さんが病気だって、お前知ってたか?」

   「ああ、昨年大きな手術をしたって聞いた、碓氷の親戚だって人が
    店の常連で、俺が唯と高校の同級生だって知ってから、
    ちょくちょくいろんなことを教えてくれる。」

   「じゃあ、唯がお見合いすることも、知ってるのか。」



 そう聞いた透に、なんでお前がそのことを知ってるんだ?と逆に
 悠が問いかけた。



   「東京で唯にあったんだ。」



 そういった透に悠は頷き、ちょっとだけ付き合えよと言いながら
 ウイスキーのはいったグラスを透の前においた。

 しばらく無言でグラスをかたむけていた悠が、突然言った。




   「それで透は、また、唯がいなくなるのを指をくわえて
    見ているだけか。」

   「指をくわえてって、、。」

   「だって、そうだろう?」



 思いの外、強い口調でそういわれて、透はだまりこむ。



   「何を怖がっている?」



 悠がそう言い、何を言われているかわからない透は悠をじっと見つめた。



   「俺が怖がってるって?」

   「ああ、お前がおもうほど唯は弱かねーよ、弱いのはお前だ、透。」


 グラスの中の氷がとけて、カランと音をたてた。
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