許嫁な二人

   「しけた顔を見せに来るな、治るものも治らんようになる。」



 顔をみるなり祖父の巌にそういわれて、透はため息をついた。

 今日はあっちでもこっちでも言われたい放題だなと思う。



   「勉学にはうちこんでいるのか?」

   「まじめにやってます。」



 そうこたえた透を巌はじっと見据えて



   「まったくお前はふらふらしおって、、、。」



 と苦い顔をした。

 中学の途中から、祖父の言うことを聞かなくなった透と巌は
 何回も衝突した。

 こうやって普通に口をきけるようになったのは、最近のことだ。



   「その航空なんたらの勉強をしていて、まともな職にちゃんと
    つけるんだろうな。」



 祖父の言っているまともな職といえるかどうかわからないが、
 透のいっている大学は名の通ったところだし、就職浪人にはならないと
 思う。

 巌に就職のことをいわれて、透は心の中のもやもやを吐き出すような
 気持ちで口をひらいた。



   
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