許嫁な二人

   「俺と唯が許婚ってことはさ、じいちゃん達の中では、俺が
    碓氷神社を継ぐって考えてたってこと?」



 突然、透の口からでてきた古い話に巌はびっくりしたような顔になる。



   「どうした?突然、、。」

   「許婚ってさ、どういうことだったかなと思ってさ。」

   「ああ、あれは、この世では添い遂げれなかった我が瀬戸の祖先と
    碓氷の姫が、後世かならず添い遂げましょうとちかったことが
    伝わっておってな。
    碓氷神社を継ぐというより、お互い添い遂げようという気持ちで
    いることが大切なんじゃ。」

   「添い遂げようとする気持ち、、、。」

   「そうして結ばれることで、祖先の意思も継げたことになる。
    もっとも、お前はそれを嫌っておったし、今のお前なんか
    では話にならん。」



 そう言って、巌は鼻の先で笑った。

 先祖から受け継がれた意思なのかどうかは知らないが、透はやすやすと
 唯を諦める気持ちにはなれないでいた。

 いつもそうだ、てを伸ばした先から唯が消えても、透の心の中から
 唯は去っていかない。



   「その許婚のはなし、なくなったわけじゃないんだろ?」
    
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