許嫁な二人
突然、家に一度帰ってくるようにいわれ、父の具合でも悪くなったかと
心配した唯は、おやすみをもらって桜下に帰った。
「お話はなんですか?」
父は元気だったが、唯をみて戸惑った顔をした。
「瀬戸の家から手紙が来た、今度のお前のお見合いに
異議申し立てとあった。」
「は?それは、、、。」
「瀬戸と碓氷の間には、許婚のとりきめがあったはずで、
それを蔑ろにし、お見合いの話をすすめるのは
如何なものかということらしい。」
「許婚、、、。」
「言われてみればたしかにそうだが、お前達が小さいときの
話で、私も忘れていた。
それともお前、瀬戸の透くんと、許婚のことで将来の約束
でもしていたのか?」
「そんなことは、ありません!」
唯は叫ぶように言った。
確かに許婚の話はあったけど、そんなことはもう皆んなが
昔の冗談だとしか思っていなかったはず。
何も言わず考え込む娘をみて、父は言った。
「とにかく、お前に確かめねばと思ったんだ、
お見合いの話は進めていいのかね。」