許嫁な二人

 そう問われて、”はい”と返事をするつもりだったのに、言葉は
 喉の奥からでてこなかった。

 ”一緒にいたい”と透に耳元で囁かれた言葉が蘇る。

 お見合いを断れるはずがないと思っているのに、心のどこかが
 それに激しく抗っている。



   「唯?」



 名前をよばれて顔をあげると、心配気に唯をみる父の顔があった。



   「唯、私の体のことを心配してくれるのはありがたいが
    お前の気持ちは本当のところどうなんだ。」

   「私の、、気持ち、、。」

   「そうだ、それが何より大切だ。お見合いをすすめるにしろ
    瀬戸の申し出をうけて、許婚の話をすすめるにしろ
    大切なのは、唯の気持ちだ。」

   「許婚の話をすすめる?」

   「ああ、そうしてほしいと手紙にはあったよ。
    透くんも了承しているそうだ。」
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